卵管鏡下卵管形成術(FT)

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卵管鏡下卵管形成術(FT)について知っておきたいことNeed to Know

女性側の不妊の原因は、排卵因子(排卵障害)、卵管因子(卵管の閉塞、狭窄、癒着)、子宮因子(子宮筋腫や子宮内膜ポリープなど)、頸管因子(子宮頸管炎など)、免疫因子の5つに 大別され、特に排卵因子と卵管因子は男性因子と合わせて不妊症の3大原因といわれています。 ここでは、卵管因子による不妊の治療法として行われている「卵管鏡下卵管形成術(FT)」について解説します。

卵管鏡下卵管形成術(FT)について

卵管鏡下卵管形成術(FT)は、卵管が狭くなったり、詰まったりして受精卵が通過できず、妊娠に至らない「卵管性不妊症」を対象とした治療法です。

卵巣から排卵した卵子は卵管采でキャッチされ、卵管を通ってきた精子と出会って受精します。できた受精卵は細い卵管を通って子宮へ向かい、子宮内膜に着床し、妊娠に至ります。

したがって、何らかの理由で卵管の通りが悪いと、精子が卵子のもとにたどり着けないほか、受精卵ができたとしても子宮内膜に運搬することができないため、自然妊娠の確率が極めて低くなります。

また、受精卵が卵管を通過できないため子宮内膜以外に着床し、子宮外妊娠を引き起こすこともあります。受精卵は子宮以外では育つことができないため、子宮外妊娠になると妊娠を継続することはできません。

子宮卵管造影という検査を行うことで、卵管が詰まっていたり狭くなっていたりすることが判明します。卵管性不妊症であることがわかった場合、卵管鏡下卵管形成術を実施し、卵管の詰まりや狭窄を解消します。卵管鏡下卵管形成術は、排卵能力がある比較的若い患者さまに有効な治療法です。卵管鏡下卵管形成術を行うことで、タイミング指導のみで妊娠に至ることも珍しくありません。

なお、卵管性不妊症には、片側閉塞と両側閉塞があります。それぞれを下記で解説します。

片側閉塞

卵管は左右2つありますが、片側だけが閉塞や狭窄を起こしている状態が片側閉塞です。正常な卵管がひとつはあるため、妊娠の可能性はゼロではありません。ただし、 毎月の排卵が交互の卵管で起こるとは限らないこと、閉塞や狭窄がない卵管の状態が万全とはいえない場合もあることから、両側が正常な場合に比べると妊娠が成立する確率は低下します。

両側閉塞

卵管が左右とも詰まっている、あるいは狭くなっている状態が両側閉塞です。両側閉塞では自然妊娠の可能性が限りなく低いため、卵管鏡下卵管形成術(FT)が第一選択となります。

卵管の役割

卵管は卵巣と子宮を結ぶ長さ約10cm、直径約1~1.5mmの通路です。妊娠を成立させるために不可欠な器官であり、かつ不妊の原因となることが非常に多い器官ともいわれています。

ここからは、卵管の役割について、妊娠成立までの流れに沿って解説します。

自然妊娠に近い方法で妊娠率を向上させられる

排卵日を特定して状態の良い精子を直接子宮に送り込むため、通常の性交渉よりも妊娠率が高いのが、人工授精の大きなメリットです。精子と卵子が受精して妊娠が成立するという過程は、自然妊娠(=タイミング指導)と同じです。洗浄・濃縮した精子を子宮に直接送り込むことで妊娠率の向上を狙います

1.排卵した卵子を受け止め、取り込む

卵管の先には、手のような形をした「卵管采」と呼ばれる部分があります。排卵した卵子は、この卵管采から卵管の中に取り込まれます。このとき、卵管采が炎症を起こしていると、卵子をキャッチすることができません。これまで、人工授精は全額自費診療であったため、治療にかかった費用の一部を各自治体の特定不妊治療助成制度を利用して補填するのが一般的でした。費用面で負担を感じていた方も多いでしょう。

2022年4月から、人工授精などの一般不妊治療、および体外受精・顕微授精などの生殖補助医療(ART)が保険適用となりました。より安価に不妊治療にトライできるようになり、以前よりも治療を受けるハードルが下がっています。人工授精は、体外受精・顕微授精よりも安価にチャレンジすることが可能です。

2.精子を運ぶ

取り込まれた卵子は卵管膨大部に運ばれ、卵管を通ってくる精子の到着を待ちます。

3.精子と卵子を出会わせる

卵管膨大部と呼ばれる場所で精子と卵子が出会うと、受精が成立します。女性の体内における精子の寿命は72時間といわれ、この時間内に卵子と出会えるかどうかが妊娠成立のカギを握っています。

4.受精卵の発育と子宮への移動を助ける

受精卵は細胞分裂を繰り返しながら、卵巣膨大部から子宮へと卵管を進んでいきます。卵管はその育成と移動を助け、受精卵を子宮まで送り届けます。

卵管鏡下卵管形成術(FT)の方法

ここからは、卵管鏡下卵管形成術(FT)の具体的な方法を見ていきましょう。

卵管鏡下卵管形成術は、カテーテルと呼ばれる細長い管を腟から挿入し、狭窄や閉塞が見られる箇所をバルーンで押し広げることによって拡張していく手術です。

カテーテル治療は、メスによる切開などの外科的処置を伴わない体に優しい治療法であり、卵管鏡下卵管形成術は入院せず外来で行うことができます。

にしたんARTクリニックでは、大阪院でのみ卵管鏡下卵管形成術を実施しています。

卵管鏡下卵管形成術(FT)の流れ

卵管鏡下卵管形成術(FT)は、下記の流れに沿って行われます。

1.カテーテルを挿入する

バルーンを内蔵した直径約1mmのFTカテーテルを腟から挿入します。子宮頸部を確認してから子宮内に挿入して卵管の入り口を探します。

2.卵管の入り口からカテーテルを伸ばし、
バルーンを操作する

卵管内で、カテーテルに内蔵されたバルーンを推し進め、狭窄や閉塞を見つけたらバルーンを加圧して拡張します。

3.開通したら、卵管の状態を確認

通過障害のある部分を開通させたら、卵管鏡で卵管の状態を確認しながらバルーンを引き戻して終了です。

卵管鏡下卵管形成術(FT)のメリット

卵管鏡下卵管形成術(FT)を行うことにより、妊娠を阻む大きな要因である卵管の問題が改善されれば、自然妊娠や人工授精(AIH)による妊娠の成立が期待できます。卵管の障害を理由に体外受精(IVF)をすすめられた場合も、卵管鏡下卵管形成術で妊娠できるケースも多く、手術適応かどうかの検査をしてみることは有用だといえます。

特に、卵巣予備能が高い20代の患者さまの場合、体外受精に進む前のステップとして試してみる価値があります。保険適用の手術であるため、費用負担を抑えられるのもメリットのひとつです。

また、卵管鏡下卵管形成術の術中には卵管鏡を用いて卵管内をくまなく観察することが可能です。そのため、卵管の状態を的確に見極め、適切なタイミングで生殖補助医療(ART)に切り替えることも可能です。

卵管鏡下卵管形成術(FT)のデメリット・副作用

・麻酔の副作用が生じることも
卵管鏡下卵管形成術では局所麻酔、静脈麻酔を併用します。そのため、麻酔の副作用でふらつきなどの症状が出る場合があります。手術は短時間で済みますが、前後の車の運転などは避けてください。

・術後に腹痛や発熱する場合も
卵管の狭窄や閉塞が強く施術が長引いたり身体に負担になったりすることがあります。その際、術後に軽い腹痛や発熱、少量の出血がある可能性が生じます。

・卵管閉塞があれば必ず施術できるわけではない
子宮卵管造影検査や子宮鏡下卵管通水検査で、片側もしくは両側の卵管閉塞が確認できた場合、卵管鏡下卵管形成術の適応になります。ただし、卵管采の部分が完全に癒着して閉塞している場合、卵管鏡下卵管形成術では改善が見込めず、腹腔鏡手術での対応となります。

・卵管鏡下卵管形成術の実施後に必ず妊娠できるわけではない
卵管鏡下卵管形成術は年齢が20代で比較的若く、排卵能が十分にある方に適した治療です。卵管鏡下卵管形成術を実施した後の妊娠率は、生殖補助医療(ART)と同じく年齢が高くなるにつれて低下することがわかっています。

40歳以上も卵管鏡下卵管形成術の対象にはなりますが、できるだけ早く実施することが望ましいでしょう 。なお、卵管鏡下卵管形成術を終えた後、タイミング指導や人工授精などの一般不妊治療を半年ほど継続して妊娠に至らない場合には、体外受精へのステップアップも視野に入れる必要があります。

卵管鏡下卵管形成術(FT)の効果

卵管鏡下卵管形成術(FT)を行うと、約80~90% の確率で卵管が開通し、30%以上の確率で妊娠が見込めるといわれています。不妊の原因がほかになければ、自然妊娠や人工授精(AIH)による妊娠の可能性が十分期待できるといっていいでしょう。また、卵管が開通した場合、治療の効果は約半年間継続します。

ただし、卵管の閉塞や狭窄の程度によっては、卵管が開通しないこともあります。開通後、早期に卵管の再閉塞や再狭窄が起こる可能性も否定できません。また、手術で卵管内の障害が改善されても、卵管周囲の癒着を引き起こすクラミジア感染症などの既往症があると、卵管の機能が回復しないこともあります。また、治療にあたり、年齢や閉塞の原因、程度などにより、効果には差があります。

卵管鏡下卵管形成術(FT)の注意点

卵管鏡下卵管形成術(FT)を行うにあたって注意すべきことは大きく2つあります。下記でご紹介します。

手術までは避妊する

妊娠の可能性がある場合、卵管鏡下卵管形成術を行うことはできません。そのため、手術日の前日までの性交渉は避妊する必要があります。また、感染症予防の観点から手術当日の性交渉はお控えください。翌⽇以降であれば制限はありません。

卵管鏡下卵管形成術(FT)の料金

にしたんARTクリニック大阪院で卵管鏡下卵管形成術(FT)を施術する場合の費用は下記のとおりです。

■卵管鏡下卵管形成術(FT) ※大阪院のみ対応可
保険診療 自費診療
卵管鏡下卵管形成術(FT) 片側 139,230円 -
両側 278,460円 -

卵管鏡下卵管形成術は保険適用の治療ですが、自己負担額が低いとはいえません。そのため、高額療養費制度の対象となっています。高額療養費制度とは 、1ヵ月の間にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、自己負担限度額を超えた分が払い戻される制度です。自己負担限度額は、年齢や所得状況などによって区分されています。

卵管鏡下卵管形成術を受けることで自己負担限度額を超えることが事前にわかっている場合は、加入している健康保険組合に申請しておき、「限度額適用認定証」を提示すると手続きがスムーズです。

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